忍者ブログ
なんとな~くやってみるブログ。
[382]  [381]  [380]  [379]  [378]  [377]  [376]  [375]  [374]  [373]  [372
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ねぇ、リツ?」
「ん??」
 タカタカタンタカ………あれ??
あぁ………トリプルの方が良いか???
タカタタカタタン…うん、こっちの方がしっくりくるかも。
今日もおやまじゃくしと睨めっこ。
 譜読みって正直面倒だ。
やっぱシュウに一回吹いて貰った方が楽かもしれない。
耳コピだったらサラーっと出来るのに。
 隣にいる春奈の声だって、ほとんど遠くに霞んで聞こえない。
まぁ…春奈だから、良いんだけど。
「ねぇ、リツってば。聞こえてる?」
「…………うん?」
「あのさ、あたし達付き合おっか?」
「…………」
 …………………
今コイツ、何て言った?
 俺はやっと譜面から顔を上げて、その端正な顔を見つめる。
にっこり俺を見ている顔は客観的に見れば可愛い。
あぁ、顔だけは、だけど。
「ねぇ、あたし達、付き合おっか?」
 俺まだ何も言ってないんだけど………
顔に出てたんだろうか、春奈がもう一回。
今度は力強く言ってみせる。
 何言い始めるんだ、この女。
その声のトーンは「明日買い物付き合ってよ」って時とまったく変わらない。
まったくよどみない。
「何言ってんの、お前。」
「だってリツ、私の事好きじゃん。」
「はぁ!!?」
 まるで「リツって甘い物好きだよね」とか言うみたいに。
何を自惚れてんだ、この女は。
あぁ、でも好きか嫌いかで言ったら好きなのかもしれない。
けど、それはそれ、これはこれ。
こんな色気のない女はどうかと思うよ、俺は。
「何、春奈飢えてんの?」
「まさか、私はいつでもモテモテですー!」
「じゃあいいじゃん。」
「いや、今まで何人か付き合ってみたんだけどね?」
「………はぁっ!!?」
 こいつ、俺が音楽やらサッカーやらでそんなん考えてる余裕もない時に。
何をそんな暢気な事してんだ。
っつーか
「聞いてない!!!」
「言ってないもん。」
「なんで!!!」
「だってリツに言う必要ある?」
「………………………」
 あぁ、そうだよな。
ただの幼なじみだもんな。
言う必要はないよ。
でも………でも…
「何人?」
「三人。」
「……………お前なぁ…………」
「良い人だったけどね、みんな。でも、なんていうかこう…しっくり来ないんだよねぇ…」
「あっそ。」
「リツほどしっくり来る人いないよ?」
「………………はぁ?」
 こいつはいつも唐突すぎて、ちょっとついて行けない。
「おま……何言って…………」
「ふふーっ、だから付き合っちゃおうよ。何なら私以外と付き合ってみれば良いじゃん。そしたら私の偉大さが分かるよ。」
「別の人に心奪われちゃうかもよ?」
「それはないわね。」
「あるよ。」
「ない。」
 にこにこと笑いながら、目の前の女が俺に抱きついてくる。
ドキドキしたりとか、全然そんなんない。
いいの?俺の恋愛、こんなんで良いの!!?
「よろしくね、私のカレシさん!!」
「あれ、誰か他の女と付き合ってみればってのは……??」
「ん?二股オッケーだよ?」
「するか!!!!!ばか!!!!!!」
 俺がちょっとムッときてその細い体を引き離すと、春奈はこくんと首をかしげる。
「なんで?」
「なんでって、お前は良くてもその別の女の子が可哀想だろ!!」
「ん?あぁ~~…………」
 俺は怒ってる。
のに、春奈はふにゃっと笑って見せた。
何だってんだ、ホントに。
「私、リツのそういうとこ好き。」
「あぁ、そうかよ。」
「うん、だから付き合おう?ね??」
「…………………………」
 春奈の事は好きだ、多分。
でもそれ以上に俺には気になる事があるわけで。
「お前さ、身長今何cm?」
「155。」
「……………………」
 俺より1cm低い。
「俺ね、付き合うなら自分より背低い子って決めてんの。」
「今はセーフ。」
「うん、ギリギリ。」
「じゃあ、私の方がおっきくなったら別れよっか。」
「うん。」
 何だ、俺ら。
良いのか、コイビトって、こんなんでいいの…!!!?
 自問自答しつつ。
それでも春奈は俺の、俺は春奈の、コイビトになった。






「あ………そういえば四人だった。」
「何が?」
「付き合った人。」
「あーっそう。」
 もうツッコミ入れる気も失せるよ。
何人付き合ってようと、俺には関係ないじゃんか。
「テツさんと付き合ったよ、私。」
「………………はぁーっ!!!!!!?」
 何馬鹿言ってんだ、コイツ。
だってアイツは……………
「一日デート。」
「お前ね、それ向こうは『一緒に遊んだ』感覚だよ、絶対。」
「うん、私もそう思う。」
 春奈はにこーっと人なつっこく笑ってみせる。
「でも、なかなか良かったよ?」
「何が?」
「うん?楽しかったって事。誰かさんと違って私の事大切にしてくれるし?」
「あいつフェミニストで年下好きだからね。」
 そりゃあまぁ、そうだろう。
きっと優しい目で春奈を見て、その後ろをついて行く。
もうそんな様子が目に見えるさ。
「うん、私リツと別れたら本気でテツさんの彼女になってるかも。」
「はー、まぁそれはないだろうね。」
「なんで?」
「ないね。」
「どうして?」
「テツは、春奈が俺の事好きだって知ってるからね。」
「…………言うわね。」
「言うよ。」
 いいじゃん、自惚れじゃねーもん。
どうも俺は春奈が好きらしくて、春奈は俺が好きらしい。
それでいいじゃないか。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
リヴリー
アクセス解析
忍者ブログ [PR]