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ロリ完成しました!
が、こっちには載せずにずっと忘れていた小ネタ投下。
冒険に出る直前のテツ。
いろいろなものから逃げるように家を出てきた子。



「シュウ…俺な…………」
 テツは先の言葉を紡ごうとして、押し黙る。
言いずらそうに俺を見て、分かって?と言いたいのだろう。
とりあえず俺はエスパーである訳もなく、こいつの言いたい事を分かってやる事なんて出来ないのだが。
その赤い髪をわしゃわしゃとなでてやることは出来る。
「シュウ…………」
 不安そうに俺を見つめる翡翠色の瞳。
こいつが何を求めているのか、分からないけれど。
「ゆっくりで良いから。」
 言葉を促すのは、きっとこの言葉。
言ってやると、たちまちテツは下を向いて。
それから俺を見上げて、何か言いたげに口をぱくぱくさせて。
ようやく続きの言葉を口に出す。
「俺な、外国行こうと思うんだ…………」
「そっか。」
 驚きはなかった。
そんな予感はあったのかもしれない。
こいつが、いつか遠くに行ってしまうかもしれない。
そんな予感。
「ごめん…………」
「なんで謝るんだ?」
「言うのが遅くなった。」
「そっか。」
 分かっていた。
人に迷惑をかける事を極度にいやがるこいつが、結局肝心な事は誰にも相談せずに。
一人で背負い込んで決めてしまう事くらい。
「怒ってるか?」
「まさか。」
「………………ごめん……」
 テツはそうつぶやいて、笑う。
相当無理して笑顔を作っている。
そんなの誰の目から見たってきっと明らかだ。
 いつからだろう?
いつも日だまりのように、ぽかぽかと微笑んでいただけのこいつが。
悲しみを隠すかのように笑うようになってしまったのは。
 愚問か。
こいつの両親が亡くなってから…
いや、殺されたという事実を知ってから、だ。
「シュウには散々世話になったのに、結局いっつも迷惑かけてんのは俺だ。」
「…俺が好きで世話してんだ、気にすんな。」
「でも頼りっぱなしは嫌で、俺、努力はしてきたつもりなんだ。料理も洗濯も掃除も全部覚えた、一人で生きられるようになった。だからもう……」
「そっか。」
 俺のそばから離れていく。
俺なしで生きられるようになったお前は。
「逃げるのか。」
 最低だ、俺。
こんな所でこんな言葉を口走る俺は。
分かっているのに、お前を手放すのがなんだか無性に悔しくて。
お前を分かってやれない俺が悔しくて。
 お前のゆがむ顔を見ている俺は、最低だ。
「…………俺の存在が、ツカサを苦しめてて、シュウにも迷惑かけてて、リツやユウまでも縛り付け始めてる…だから…………」
 ツカサはお前が好きだから、苦しんでる。
俺はお前が好きだから、進んで迷惑かけられてる。
リツとユウもお前が好きだから、独り立ち出来ずにいる。
「みんなお前が好きなんだ。」
「ありがと。俺もみんなが大好きだ。」
「……………そっか。」
「だから、行くよ。」
「………………………そっか。」
 好きだから苦しむのか。
悪循環だ。
「戻ってくるか?」
「…いつか、は。」
「いつか、な。」
 あいまいな答えに。
こいつは戻ってこないのかもしれないと、漠然と思う。
「戻ってこいよ。」
「……………………」
 返事はない。
俺が言うと、黙ってテツは笑った。
泣きそうな顔で、笑った。
「なぁ、このこと、誰にも言わねぇで?明日の夕方の船で出発するから……あっ、シュウも見送りとか、なしな。絶対決心鈍っちまうもん。」
 そこまでして、この地を去りたいと。
お前はそう言うのか。
「………分かった。」
「ありがとう。」
 さよなら、そういって笑うお前は。
やっぱり泣きそうに見えた。
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